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          子供と虫歯

曹洞宗・蔵海軒・村上徹山


一週間前に亡くなられた方のお宅にお経を読みに伺いました。読経が終わって家族の焼香です。その中に故人のひ孫にあたる女の子がお母さんと一緒に焼香していました。聞けば保育園の年長組でした。一緒に焼香している挙措動作には”落ち着き”が感じられ好ましい印象を受けました。

笑った唇から覗く白い歯が輝いていました。この子には虫歯がありますか、と聞きますと、いいえ一本もありません、という答えが返ってきました。聞けば歯磨きや食事には気をつけているとのこと。その子の様子から日常の躾けもちゃんと出来ているように見受けられました。当たり前のことではありますが何か清々しい気持ちにさせられました。

虫歯の原因は周囲の大人達から虫歯菌の伝染、不規則な食生活、栄養のバランスが悪い、歯磨きの習慣が身に着いていない、いろいろあるようです。

 いうまでもなく歯の健康は人の心と体の健全な発達に欠かせません。特に永久歯に変わるまでのそれは大切です。「幼児の虫歯は親の虐待である」と私は考えています。三歳や四歳で自分の子供に虫歯をつくり、その上痛くて我慢出来なくなるまで治療も受けさせず放置するような親は逮捕されべきであると本気で思っています。

親だけではありません。たまに会うからといってやたらお菓子やジュースを与えて子供のご機嫌をとろうとするおじいちゃんとおばあちゃんの罪は大きいものがあります。諍いになることを恐れて子供の躾けに関して放任主義を決め込むおじいちゃんとおばあちゃんも同罪です。

曹洞宗の開祖で永平寺を創建され修行僧を指導された道元禅師はその著書の中で食事作法(作り方や頂き方)や顔の洗い方、歯の磨き方まで細かく指示されています。鎌倉時代のことです。この時代は今と違って甘いものが簡単に手に入る時代ではありませんでしたが、それでもこのことが心と体の健康を保持していくために大事なことであるという信念を持っておられたのです。

昔は少なかった贅沢な食べものが子供の周囲に氾濫している現在、世の親御さん達にとって”子育て”は難しい時代になっています。だからこそ周囲の大人 達も干渉すべき時には、たとえ憎まれても助言を惜しまないという態度が必要ではないでしょうか。

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