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          『千の風になって』

浄土真宗・光源寺副・三上照文


  私のお墓の前で 泣かないでください
 
  そこに私はいません 眠ってなんかいません
 
  千の風に 千の風になって
 
  あの大きな空を 吹きわたっています
 
  秋には光になって 畑にふりそそぐ
 
  冬はダイヤのように きらめく雪になる
 
  朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
 
  夜は星になって あなたを見守る
 
  私のお墓の前で 泣かないでください

 これは、作家の新井満さんの訳による『千の風になって』という詩の一節です。

 作者不明の一篇の詩ですが、近年、新聞などでも紹介され、ご存知の方も多いのではないかと思います。

 ところで、お正信偈の中に「かならず無量光明土に至れば、諸有の衆生みなあまねく化す」というご文があります。

 お浄土は阿弥陀様の智慧の世界だからこそ、かぎりない光りに満ちた世界、無量光明土であると説かれています。

 私たちは墓の下のような暗い世界にゆくのではありません。

 もちろんお墓は亡くなられた方のお骨を納め、故人を偲び、また仏縁にあわせていただく大切な場所です。

 しかし、行き場所はあくまでお浄土です。

 阿弥陀様のご本願をいただき、念仏申し、必ず無量光明土に至るのです。

 そして、浄土はこの世となんの関係もなくなるところではありません。

 浄土で仏とならせていただいたら、この娑婆世界に還って来ます。
 
 それが「諸有の衆生みなあまねく化す」ということです。

 何のために還ってこられるのかというと、阿弥陀様の願いを私たちに伝え、導くためです。

 せっかく得がたい人間としての生を受けたのだから、どうか仏法を聞いて、念仏申す人生を歩んでくれと、いろいろなかたちではたらきつづけてくださるのが仏様です。

 「千の風になって」という詩は、願いの詩です。

 大空を吹きわたる風のように、私たちもいつか願いのはたらき、仏様とならせていただくのです。




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