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          ヤノマミ

浄土真宗・光源寺副・三上照文


 先日、NHKスペシャルで『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』という番組を見ました。

 アマゾンの奥地にヤノマミ族という部族が住んでいます。

 「ヤノマミ」とは彼らの言葉で、「人間」を意味する言葉です。

 ヤノマミ族は外部から遮断された環境で、1万年以上に渡り独自の文化・風習を守り続け、狩猟採集の生活を行っています。

 その番組の中、ある14歳の少女が未婚のまま妊娠し、出産しました。

 しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは、彼らにとってまだ人間ではなく、精霊なのだといいます。

 そして、赤ちゃんを人間として迎え入れるか、精霊として天に帰すかをその場で母親が決めるのです。

 少女は自分の子供を精霊として天に帰すことを選びました。

 少女は子供を大きな葉っぱにくるみ、白アリのアリ塚にそれを納めました。
 
 それが子供を精霊として天に帰す儀式なのだというのです。

 その晩、少女の父親が囲炉裏のそばで「森は大きい、歩けないほど大きい」と少女を慰めているのが印象的でした。

 その村では毎年20人以上の子供が生まれ、その半数以上がアリ塚に置かれ、その後、アリ塚ごと焼かれるそうです。

 親鸞聖人は正信偈の中に「大悲、倦きことなくしてつねにわれを照らしたまふ」と阿弥陀さまを讃えてくださっています。

 大悲とは大きな悲しみと書きますが、阿弥陀さまのお心のことです。

 阿弥陀さまは私たちの心のどん底まで知り尽くし、共に涙を流してくださる仏さまです。

 「ヤノマミ」とは「人間」という意味です。

 文明社会に生きようが、アマゾンの奥地に生きようが、阿弥陀さまからご覧になれば、同じ迷いの世界を生きる「人間」に変わりありません。

 迷いを生き、苦悩し続ける私だからこそ、「必ずお前を仏にさせる」と大悲のお心で、今、阿弥陀さまは、真実ならざるこの私にはたらいてくださっているのだと、改めて感じさせていただいたことです。




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