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          飛行機と蒸気船に乗って

曹洞宗・海潮寺副・木村延崇


 あるお盆の日、お檀家さんをお参りしますと、仏壇に飛行機と蒸気船の小さな模型が供えられていました。

 最初はお子さまでも亡くされたのかな?と不思議に思いました。

 お盆のお供え物に、キュウリで作られた馬と、なすびの牛があります。

 ご先祖さまには待ち遠しいですから、馬に乗ってできるだけ早く来ていただき、お帰りは名残惜しく牛に乗ってゆっくりと、お土産もたくさん積んでお帰りいただくということでしょう。

 そこで私は模型を眺めながら、現代的にジェット機でもっと速く、クルーザーでもっとゆっくり快適に、ということだろうなと思いました。

 でもそのお檀家さんはこうおっしゃいます。

 ご先祖さまには、両親や祖父母以外に、途方もなく多くの方々がおられます。

 たくさんのご先祖さまが安心してお盆にお帰りいただける事を祈って、二つの模型をお供えしています、との事でした。

 そのとき、これは一本取られたな、と感心いたしました。

 普通先祖供養といえば、両親や祖父母、兄弟など、自分に身近で顔も名前もよく知った方々に対しておこなうのが一般的ではないでしょうか。

 でも顔も名前も知らないご先祖さまは、とてもたくさんいらっしゃいます。

 地方によっては、この時期お施餓鬼という先祖供養も営まれます。

 この法要は、自分たちのご先祖さまだけではなく、ありとあらゆる御霊に対しても、たくさんのお供えをしてご供養するものです。

 古来多くの日本人はお盆という伝統行事を大切にしてきました。

 年に一度家族が揃い、スケールの大きないのちの世界を実感できる、貴重な学びの場でもあると思います。




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