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      鏡開きと寿餅(じゅびょう)

曹洞宗・海潮寺・木村延崇


 新年が明け、正月行事も一段落を迎えようとする11日は、地域によっては、鏡開きに相当いたします。

 正月には各家では門松を据え、祖先神たる年神様をお迎えいたします。

 床の間や神棚に鏡餅をお供えし、正月期間中、年神様に滞在していただきます。

 丸々とした餅は生命や魂の象徴と捉えられ、出産・結婚・病気・死などの人生儀礼、家の普請の折にはよく搗かれたものです。

 当山でも山門に門松、本尊様に鏡餅をお供えし、各檀家さまの位牌棚にもあまたの供え餅が並びます。

 正月11日には餅はすっかり固く締まり、割って雑煮にしたり、ぜんざい・汁粉にして、家族揃っていただくこととなります。

 ところで、曹洞宗では恩師への年始挨拶にあたり、供え餅一重ねをお贈りするのを正式な慣例としております。

 これを寿餅(じゅびょう)と呼び慣わし、鏡開きの頃には固く閉まった餅をお召し上がりいただき「歯固め」を祈念します。

 歯は齢に通じることから「齢を固める」、すなわち生命の象徴たる餅によって、年齢の象徴たる歯を丈夫に保ち、長寿をお祈りするわけです。

 近年は餅の加工技術も革新化が進み、柔らかさを長く保つ商品も広く知られ、いつまでもおいしくいただけますので申し分ありません。

 一方で固くなる餅に奥ゆかしい意義を見出してきた先人たちに、深く思いをいたしたいと念じております。