トップ > ネット法話
このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。[開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。
(曹洞宗・海潮寺・木村延崇)
萩のあちこちでは梅のみならず、早咲きの河津桜も満開となっております。
ほころぶのは花ばかりではありません。
あたりまえですが草たちもいよいよ芽吹きはじめます。
春の陽気が感じられる好時節でありながら、高祖大師曰わく「花は愛惜(あいじゃく)に散り 草は棄嫌(きけん)におふるのみなり」(現成公案)をまざまざと感じさせられる時節でもあります。
旬の草花でもあるカタバミは、均整のとれた三つ葉に可憐な黄色い花をまといます。
ところが以前も申し上げましたとおり、美しく整えられた芝生にとっては厄介な雑草、と受けとめる方も多いことでしょう。
抜いても抜いてもしぶとい繁殖力には舌を巻くほどです。
この驚異的な生命力をまとったカタバミは、子孫繁栄を期待して武家はじめ、家紋「片喰」として大いに好まれました。
毛利家が家紋に用いた「沢潟(おもだか)」も水田稲作にとっては駆除が大変困難とされた植物。
現代の私どもはカタバミやオモダカの類いを「雑草」と切り捨て、やや不当な評価を下しておりますが、古人は一族の象徴にまで格上げ転じさせたわけですから、その見識には学ぶことが多そうです。