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          心静かに生きよう

(臨済宗・徳隣寺・阿部浩岳


 秋の虫が鳴き始め、どの虫の音色も涼やかですが、中でも鈴虫は一際鮮やかに感じられ、『妙なる音色の鈴を鳴らしたような』得も言われぬ快さに、鈴虫と名付けた先人の感性の豊かさを実感しているところです。

 今年は東日本大震災に見舞われ、大型の台風も接近する中で「被害が最小限に留まりますように。被災地が一日も早く復旧復興しますように。」と祈りつつ録音をしております。

 私たち人類は、『大自然に手を加えて便利な暮らしをさせて頂いている。そのことへの感謝や慎みの気持ちを忘れているのではないだろうか。』と以前お話しさせて頂きましたが、これからは仏教で言う『少欲知足』に繋がる生活を実践せざるを得ない状況になりました。

 この夏も凄まじい暑さでしたが、皆さんそれぞれがお体に無理のない範囲で、『無駄な電力は使わない』という当たり前の生活に戻られました。

 さて、秋風が立つと一気に夏の疲れが出て参り、いつもより『やる気が出ない』とお感じになる方もおられるでしょう。

 こういった場合、「これではいけない、もっとがんばらないと・・・」などと自分に言い聞かせた方が元気が出そうですが、必ずしもそうではなく、「心静かに生きよう」「心静かに生きよう」と口ずさむと、かえって元気になるとある本で読みました。

 実はその時、精神集中して事に当たらねばならないのにエンジンが中々かからず、困っておりましたので早速「心静かに生きよう」「心静かに生きよう」と試しに口ずさんでみますと、不思議と非常に気分が落ち着き新たな意欲がわいてきて、円滑に事を終えることができました。

 『落花流水を送る』という禅の言葉があります。『花が川に落ちると、流れが花を運んでいく。そこには営みの意図があるようで、またないようでもあり、ただ静かに自然が動いているのが感じ取れる。水は無心に花を運び、花は無心に川面に身を委せている』という意味です。

 自然の一員である私たちも、一日のほんのちょっとした時間、川面を落花が流れていくように時を過ごすことで気持ちを静めることにより、『自分の本来の清らかな心』を覆っている焦りや妄想、煩悩の雲を薄くすることができ、心の光を取り戻せるのです。

 皆さんも「心静かに生きよう」と、試しに口ずさんでみてはいかがでしょう。




音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。