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      野村克也氏の寄稿
曹洞宗・梅岳寺副・末武正憲


 私の毎週の課題に、はぎ時事新聞と週間ベースボール(以下週ベ)を読む、というのがありまして、週ベのコラムのひとつに、に「本物の野球はどこへ行った」という題で野村克也氏が寄稿されてまして、私はそれを読むのを毎週楽しみにしております。

 野村氏は説明するまでもありませんが、捕手として初めて三冠王になって、通算本塁打数は王貞治氏に次いで2位を記録し、他にも偉業を上げればキリのない選手でした。

 野村氏が南海球団に入った時はテスト生という今でいう一軍の公式戦には出られない育成選手のような扱いでした。

 そのころのエピソードがなかなかに衝撃的だったので紹介します。

 夜、寮の庭で野村氏が素振りしていると、先輩方は、「バット振って上手くなるなら誰でもやっとる。野球は元来生まれ持った才能と資質だ。」ときっぱり言い放って、野村氏を横目に夜の街に出かけていったそうです。

 野村氏は天才型ではなかったと思います。

 それでも自分に出来ることは何か一生懸命考えた上で、練習、研究、果ては番外戦術といったものまで行っていました。

 そうした努力が実を結び、世に名だたる記録を打ち立てました。

 それは各球団の監督に就任してからも発揮されました。

 ぶっちゃけて言うと、世に天才なんてものはいないと思います。

 人から見て天才だと思うような行動にも、本人からすればこうすれば確実に対応できるという自身の経験に基づいて動いているだけで、その動きがあまりに突飛なために人はそう思うのではないかと思います。

 要はほんの些細な物事のコツを知っているかあるいは否か、だと思います。

 割と得意なPCのことを例にあげましょう。

 「メールを送りたいのに、何回メーラーをクリックしても起動しない。」と人から相談を受けました。

 その時点で私はその原因を察していました。

 結果、思った通りで、実はメーラーは起動していたのです。

 ただそれが見えなかっただけで。

 しかるに、起動しているプロセスを処分した上で再度、クリックしてメーラーを起動させて事なきを得ました。

 掛かった時間はおよそ1分。

 でも知らなかったためにその相談者は何日も時間を費やしていたのです。

 相談者にとってみれば私が魔法使いか何かのように見えたことでしょう。

 でも世に天才なんていません。

 些細な事を知っているかどうかじゃないでしょうか。