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      禅の食事の心得

曹洞宗・海潮寺副・木村延崇


 禅の修行は大変厳格でありますが、食事においても古の作法に則って細心の注意を払います。

 一般社会では、食事をする前には「いただきます」というのが、常識的な食事の作法ですが、禅の修行者はその他にも、様々な唱え文句を口にします。

 たとえば「五観の偈」とよばれる、五箇条からなる食事の心得を唱えますが、その第二番目は次の通りです。

 二忖己徳行全欠応供(二つには、おのれの徳行の全欠をはかって、供に応ず)

 どのような簡素な食事であっても、実に多くの方々の努力の結晶として提供されるわけですが、自分はその努力の結晶を頂戴するに値するだけの日常生活を送っているだろうか、という自己反省を促すものです。

 しかも、「供養に応じる」とあるように、修行道場における食事とは、供養として提供されているものです。

 普通は供養というのは、ご先祖様や、仏様に対してお供えすることを指します。

 お釈迦様や修行が完成した人のことを漢訳では「応供(おうぐ)」といい、供養に応じるにふさわしい人、という意味になります。

 ですから禅僧がいただく食事は「供養」であるという自覚のもとに、いただく前には深い自己反省を伴わなければならないのです。

 これは禅の修行に限ったことではなく、一般社会で生活する人々にとっても、食事の際には謙虚な気持ちと、反省と感謝の気持ちを、持ち合わせていただきたいと思います。